東からの風がやや強く

浅く広くをモットーに色々と手を出している主義の備忘録

【ネタバレ有】完全版「戸惑いの星」感想

 

ntu0610.hatenablog.com

 何回感想書くんだよ、と思っています、自分が。
 前回の記事では核心どころを避けるのと、観劇直後(それでも2日後くらい)だったこともあり、興奮に満ちた文面になっていました。誤字もあるけど今更訂正するの面倒なのでそのままです。書いた本人が気にしていないので読まれる方も気にしないで下さい。
 で、ようやく心も落ち着いてきたので“完全版”と称してストーリーの詳細と感想を書きたいと思います。当然、ネタバレ有りです。核心どころはおろかストーリー、楽曲全て書くくらいの勢いです。後々、自分で見てストーリーを思い出せるようにする程度には書きなぐります。
 うろ覚えのところもあります。その辺りは他の方の感想、雑誌レポ記事をご参考にしていただければ。台詞もうろ覚えです。一字一句間違っている可能性もありますのでニュアンスで感じていただければ。

 

観劇日:2017年1月21日(18:00)、28日(13:00、18:00)
場所:東京グローブ座

 

・注意事項
 アンサンブルの方がベル(牧場で家畜を呼ぶようなやつ)を鳴らしながらステージ下手から上手へ移動。その後、トニセンが登場。下手から坂本さん、井ノ原さん、長野さん。まずはトニセンによる上演中の注意事項アナウンス。アンサンブルの方々がセットを移動させるなか言っているため、目の前を横切ったり、アンサンブルさんが移動させた椅子に気付かず、ぶつかったりしています。*1上演中のマナーを1つ1つ言うたびに「「「おねがいします」」」と言いながらいちいち礼をするトニセン。
 最後のアナウンス中に、ピアノ・荻野さんが喋っている坂本さんのすぐ横に。「まだ何か…?(坂本)」と声を掛けると、星座盤の形をした封筒を差し出します。
 「受け取って欲しいみたいよ(長野?)」の言葉に井ノ原さんが受け取ります。その後もその場にいる荻窪さんは終始無言でジェスチャーで中に入っている封筒を読んでほしい、と伝えます。受け取った井ノ原さんは坂本さんか長野さんに読んでもらおうとするも、「俺、手紙恐怖症なんだよ(坂本)」「俺も、最近手紙で良いことがなかった(長野)」と拒否をするので結局、井ノ原さんが読むことに。
 「孔子によると“四十にして惑わず”という言葉がありますが、~」「皆さんはどんなことに戸惑って待っていますか?」という問いかけにトークを繰り広げることに。*2

 

・フリートーク
 まず手を上げたのは長野さん。手紙を読み終えてすぐに手を上げました。それぞれ用意されたスツールに下手から坂本さん、長野さん、井ノ原さんの順番で座ります。
 「夜、夜空の星に戸惑う(長野)」。F1で天の川を横断しようとすると5千億年かかり、光でさえ10万年かかる、という宇宙に関するお話。
 話は派生して、宇宙はビッグバンが始まったときから膨張しつづけているけれど、宇宙の外側は一体どうなっているのか分からないから戸惑う。という話。*3
 次に答えたのは坂本さん。「占いに戸惑う(坂本)」*4
 自分と波長が合う占いさんに占ってもらうと、びっくりするぐらいに当たるのはどうしてなんだろう?という疑問。「その占い師さんに予知能力があるんじゃない?(長野)」「そういうのは信じていない(坂本)」とばっさり切り捨て。占いが当たるということは、あらかじめ運命が決まっていることなんじゃないのか。何もかもが運命によって決められているのかも、と思うと嫌で嫌で仕方ない。と駄々をこねるアラフィフ。
 最後は井ノ原さん。気が付くとどこか別のところにいることがある、その場所へいく途中までの記憶がない、というもの。酷いときは気が付いたらディズニーランドにいたことがある、と話し出します。
 そのときに行ったのがコネがないと入れない、ディズニーランドで唯一お酒を提供している伝説のジャズクラブ「サーティースリー」。外観は普通だけど、2階が物凄く広く、トイレがとにかくすごい、と熱弁。トイレのドアを開けると真っ暗で、次第に目が慣れてくると光の粒が見えてくる。それは夜空の星で、月も金色というより銀色に光っている。星々はゆらゆらと揺れていて、それは水面に映った夜空なのだ、と気付く。
 「凄いな、そんなアトラクションがあるんだ(長野)」「まあ、夢なんだけど(井ノ原)」「なんだ夢オチかよ(坂本)」と言うものの、話しには続きがあり、これがどうなっているのか(仕組みを)聞こうと店員さんを見ると、店員さんが全員ミッキーマウスだった。
 一人(一匹?)のミッキーマウスを捕まえ、「あなたね、ミッキーマウスは世界に一人しかいないんじゃないですか(井ノ原)?」と言うと、「じゃあ、あなたは世界にイノッチは一人しかいないと言い切れるんですか?」と言い返されたと。その言葉になんて返したの?と長野さんが聞くと「当たり前だろ」と返した。井ノ原さんの言葉に“あちゃー”と顔をゆがめる2人。
 「だって、俺がイノッチだもん」と言い始める上2人。「いやいや、俺がイノッチだって言ってんじゃん(井ノ原)」と大声で反論する2人。俺は井ノ原だからイノッチだけど、2人は全く関係ないじゃん、と反論するが、「よく占うから“ウラナイッチ”からイノッチ(坂本)」「猪突猛進の性格から最初は“イノシシッチ”って呼ばれてたけど、それがイノッチ(長野)」になったと言う2人。「だいたい、猪突猛進って性格じゃないじゃん(井ノ原)」と言い合い始める。
 「じゃあ、俺は“ナニッチ”なんだよ!(井ノ原)」がいうと、「どうしたハセッチ?」「どうしたんだよ長谷川」と言い始める2人。「長谷川?!もはや井ノ原でもないの?!(井ノ原)」と言っていると突然、眩暈に襲われたように身体がガクっと倒れそうになる井ノ原さんを支える2人。スツールに座らせて「大丈夫?」と心配がると、「最近、こういうことあるんだよね(井ノ原)」と頭を押さえながら言う。
 病院へ行ったのか?と2人が聞くと、病院へ行き、“人格喪失症”だと診断されたことを告白。
 「人格(坂本)」「喪失症(長野)」*5

 

・セットチェンジ(病名についての説明)
 「ウィキペディアによると~(長野)」と、ネットで調べた知識で症状を説明します。詳細は忘れてしまいましたが、自分と他人の区別がつかなくなってしまう病気、らしいです。何かの病気の一種である、といったことも説明していたような?
 セットチェンジ中、パイプベッド(病院でよくみるベッド)に座って、ベッドを移動させているアンサンブルさんに向かって「僕って長谷川なの?」「井ノ原じゃなくて?」と不安そうな声色で問い掛けています。

 

 あ、ここからは役名になります。

 

・病院
 長谷川(井ノ原)の病室へお見舞いにきた三池(坂本)。「僕は…(ベッドに書かれているネープレートを見て)長谷川です」「知ってるよ」「あ、そうなんだ」
 長谷川が自己紹介をしていると続いてお見舞いにきた由利にも、長谷川は同様に自分の名前をネームプレートを見て自己紹介します。
 「君は、長野くん?」「こっちが長野くん?」「じゃあ坂本くんだ」と2人の名前を当てようとするが正解せず、進んで自己紹介する三池と由利。
 ひょんなことから久しぶりに再会を果たしたときは、長谷川の症状もここまでひどいものではなかった、と回想する2人。

 

・(回想)スタジオ・サーティースリー
 突然送られてきたメールに指定された場所に三池が行くと、そこにはすでに長谷川がいた。「長谷川、くん、だよね(三池)」「君は…?(長谷川)」「三池だよ、み・い・け!ほら、ミケランジェロ!(三池)」「ああ!あの絵が上手な人だよね(長谷川)」
 三池と長谷川が自己紹介をしていると、ふらりと由利が登場。「ねえ、由利くんじゃない?(三池)」「俺、三池。ミケランジェロ(三池)」。なにかにつけてミケランジェロを連呼する三池。
 「二人は知り合いなの?(長谷川)」の問いに、隣のクラスだったけど、あまり親しい間からではなかったよう。特に、三池は卒業前に父親の転勤で引っ越してしまったから、と話します。
 「僕は…(長谷川)」三池「ほら、長谷川だよ(三池)」「長谷川…?!ハセッチ!(由利)」「あ、じゃあ、ハセッチです(長谷川)」「じゃあってなんだよ(三池)」
 一通り自己紹介が終わり、特に話すこともないので微妙な空気が流れ、何となくスタジオを散策していると、乱雑している箱の上に置いてある封筒を3人同時に見つけます。封筒には「お越しになられた皆様へ」と書かれており、開けてよいのか躊躇う長谷川をよそに「明けちゃおっか」と言って開ける三池と由利。
 「箱の中にご用意させて頂きました」と書かれた手紙。封筒が置いてあった箱の中を開けると、そこにはそれぞれ楽器と楽譜が入っており、試しに演奏してみることになります。触り部分だけ演奏をしていると、「この曲…」「…知ってる」「君たちも?」と、何故か有名でもない曲を知っている3人。

 

◇曲「Change Your Destiny」
 G2さん作詞、萩野さん音楽の新曲。
 3人が楽器片手に歌って踊って吹きます。

 

・病院(待合室?の長椅子に座る)
 三池と由利は長谷川のお見舞いに訪れたものの、長谷川は前日から眠ったまま。最近は会話もろくに出来なくなっており、症状は進んでいる様子。
 何かを思い出したように、由利は突然、一旦長谷川の病室へ行き、封筒を持ってくる。中に入っていたのは文字が敷き詰められた原稿用紙。
 「あいつ、小説家になるのが夢だって言っていた(由利)」
 昔、由利の実家のお店に出入りをしていた長谷川は、由利母に小説家になるのが夢だと言い、それを母親伝いで聞いていた由利。「由利のお袋さんって有名人じゃん(三池)」と、小学生のときにテレビでやっていたスプーン曲げを由利母が成功して、地元ではちょっとした有名人であったことを思い出した三池。だけれど、その話を聞いている由利はちょっと苦い顔をしていました。あまり思い出したくない話だったよう。
 由利が「なあ、これ読んでみない?」と小説を読もうと言い出して、三池は「本人に了承を得ていないのに?」と抵抗しつつ、原稿用紙をチラ見しつつ「やっぱりダメだ」と逸らしつつ、また原稿用紙を見つめて結局読み始める2人。

 

・小説「迷いの病の世迷言」作:長谷川幸彦
 幼いころから文章を書くのが好きで、教師にもよく褒められていた長谷川は中学生のときに「将来は小説家にでもなったらどうだ?」と教師に言われたことがきっかけで小説家を夢見ます。その後、完成した小説を持ち込みますが、「文章は綺麗だね」と言われるものの不採用。そのとき、編集者に「“華麗なるギャッツビー”の原作者・スコット・フィッツジェラルドは小説を126回不採用にされたのち、127回目で採用された“楽園のこちら側”が3日で売り切れて大ヒットした」という話を聞き、自身も127回目までは頑張ろうと決意します。
 10年後、小説を持ち込むも「もはや小説とは呼べない」と酷評され、「君にはこっちの才能がある」とし、手紙代筆業の名刺を編集者に貰った長谷川。

 

・路上
 手紙代筆業の元へ行こうとしていると、路上で似顔絵を描いている三池と出会います。三池は画家を目指しているものの全く売れず、絵の修業と称して似顔絵を仕事としていました。ところが、「俺は見た目じゃなく、ハートで描く」という三池の似顔絵は全くにておらず、おぞましい絵ばかり。そんな絵に対してなまはげのような顔で怒鳴るお客さんもいれば、気に入ってチップを弾ませるお客さんもいたり。
 「本当に描きたい絵は全く売れない」と嘆く三池に「今度、見せてよ」というものの、「インスピレーションが降りてくるのを待っている」(=画家としての絵のストックが全くない)と言う三池に「でもさ、それっていつ降りてくるの?(長谷川)」
 「お前はどうなんだよ」と三池に聞かれ、100本近く書いたものの全て不採用だったこことを話す長谷川。「もう100本近くかいたよ」に対して「そんなに書いたのか!」と三池は驚くが「採用されないと意味ない」とぼやく長谷川に、スコット・フィッツジェラルドの話をしようとするものの、「127回目で採用されたって話でしょ」と言われてしまう三池。しかも「今日がその127回目だったんだ」とさらに落ち込む長谷川。
 編集者に渡された手紙代筆業へ行こうと思っている、と三池に話すと「ゴーストライターに手を染めたら、幽霊みたいになっちまう。いるんだか分からなくなっちまう」と、止める三池。「しかし、科学的に証明されていないかぎり、幽霊がいないとは限らない」と続ける三池に長谷川は「えっ?」と疑問に思うと、そういったことを科学的に研究している奴に最近会ったんだ、と話す三池。

 

・研究室
 「お待ちしてました!」と、三池が研究室へ行くと白衣姿の由利が出迎えます。
 「これはあなたが描いた絵ですか?」と由利が持ち出してきた絵。それはおぞましいほどの絵で、三池は「いちいち覚えてらんねーよ」と言うものの、恐らく自分の絵だ、と言います。
 実は、三池に似顔絵を描いてもらった企業家の人達が、潰れかけていた会社が持ち直した、という噂があり、由利は三池の描く絵にどんな力が備わっているのか科学的に研究したい、と持ち掛けます。けれど、芸術を科学的に研究されたくない、と怒り出し、三池は研究室を去る。
 溜息を零す由利に「溜息を零すと幸せが逃げる。という言葉は誰が言いだしたんだっけ」と言いながら教授(井ノ原)が登場。
 スマホなどの研究には潤沢に費用が当てられるのに、超心理学部の実験費用が下りなかった話しをする教授。一時は多くの大学にあった超心理学も、いまや明治大とウチくらいしか学部がないこと、いまや学部には教授と由利しかないことを嘆きつつ、「どうして君は辞めない?」と由利に問います。
 超心理学を辞めない理由は2つあり、一つは音楽関係の仕事をしている妹が「音楽はただの波形でしかないのに、聞いた人間に感動を与える。その不思議さに比べたら、兄さんがやっていることは不思議ではない」と応援してくれている。そしてもう一つは、幼い頃、母がスプーン曲げをしたところを目の当たりにしたこと、と話します。

 

◇曲「不惑
曲終わりか曲中の間奏で長谷川が手紙代行業を始めることにした、という語りがあります。
「いつか僕が僕の手紙を出せるようになるまで」
「あのとき、彼女に手紙を渡せていたら、世界は見違えるものになっていたのかも知れない」


・病院
 「ちょっと待って。どうして長谷川が知っているんだ?」と由利が言い始めます。由利母から聞いたんじゃないの?と三池は言いますが、研究室の費用が下りなかったことや、スマホの話もそっくりそのままだったので「どうしてハセッチの小説にハセッチの知らないことが書かれてある?」と疑問に思います。三池の方も、ある程度は小説に書いてあることと同じようですが、今は画家も似顔絵も止めて塗装業をしている、と話します。
 小説内で2人が会っているところは嘘だけれど、由利はとある画家に依頼をして、小説に書かれているような研究をしようとしたことがある、と話します。
 疑問が残るまま、小説を読み進める2人。

 

・手紙代筆業
 サングラスにロングコートのマダム(長野)登場。長谷川が作った手紙にことごとく「ダメよぉ~」と駄目出し。長谷川に散々リテイクし、作り直させたわりには結局、「直接言う方が簡単だわ」と言い、仕事をキャンセルして帰るマダム。
 変わるように登場したのがチンピラ(坂本)。ドスの効いた果たし状を作って欲しい、と依頼するチンピラ。「この仕事初めてどれくらいかって聞いてんだよっ!」と睨みを利かせるチンピラにびびりながら「さ、三ヶ月です…」というと、「…頑張れよ」と怖い笑顔で返すチンピラ。
 手紙を書くためには手紙を渡す相手の情報や手紙の内容をどうすのか色々聞きたいのに聞き出せず、漢字をたくさん使え、書き出しは全部漢字にしよう!と次々に要求してくるチンピラに委縮しながら「ぜ、前略…」と声小さ目に言うと「いいじゃねえか」とお気に召したチンピラは残りの文章を全て長谷川に託すと、詳細を語らずにさっさと去ってしまいます。困り果てた?長谷川は「だぁーーーーーー!!!!」と言いながら机に突っ伏します。

 

◇歌「オレじゃなきゃ、キミじゃなきゃ」
 曲中、由利がしている研究について?の話が入ります。
 人間は恐怖を感じると体温が下がる、ということを利用して実験したもので、たくさんある写真に中に1枚だけおぞましい写真を入れて、被験者の体温を測定する実験の話です。結果、被験者たちはおぞましい写真を見る4秒前から体温が下がることが分かり、これは人間には予知能力が備わっているからではないでしょうか?というお話。
 最後に長谷川による語りがあります。高校のときに手紙を出せなかった彼女が、「愛する人に手紙を書きたい。でも、どうやって書けば良いのか分からない。教えて下さい」と、突然現れた。で、長谷川の語りが終わります。

 

・ジャズクラブ・サーティスリー
 バーカウンターで三池が酒を飲んでいると、由利と再会。
 絵を描いた客の会社が持ち直した、と。そのお礼に大金を貰ったもののの、どうやって使えばよいのか分からず、とりあえず酒を飲んでいる、と話す三池。そこで、マスター(井ノ原)が昔ジャズをやっていたこともあり、店内にトロンボーンがあり、演奏をしていると突然、彼女が現れた、と話しが続きます。

 

◇曲「Sing」
 おそらく、このあたりで歌がはいっていたかと思います。(うろ覚え)(自信ない)

 

 彼女と幸せな日々を過ごしていたある日、彼女の似顔絵を描いたことで幸せな生活も終わりを告げます。突然いなくなってしまった彼女。自分(三池)の絵のこと(おぞましい似顔絵)を知っているはずなので、「君の絵を見て逃げたのでは?」と由利の推測を却下。その後、届いた手紙をマスターが代読。
 手紙の内容としては、記憶喪失で街をフラフラとしているときに三池に出会い、似顔絵を描いてもらったことで全てを思い出した、と。自分には自分のあるべき道があり、そこにはあなた(三池)は存在していない、といった内容でした。まあ、あの日々のことは過ちであって、忘れましょうね。といった内容のもの。
 以来、全く絵が描けなくなってしまったため、絵の研究は出来なくなったよ(皮肉った言い方で)、「大人しく研究室に戻りなよ」と由利に言います。すると由利も「いや今の私には帰る場所がない」、「退職願いを出してきた」と自分の話をし始める。

 

・研究室
 黙々と片付けをする由利に、退職を考え直してもらえないか、と教授が説得。けれど、由利が研究を続けていた理由でもあった妹の死(余命わずかだった)と、母(坂本)から届いた手紙を理由に辞めることを曲げません。
 由利母から届いた手紙には、年老いた嫌のために稼業を継いでほしい、田舎へ戻ってきて欲しいことと、スプーン曲げはみんながテレビに夢中になっている間にテーブルに押し付けて曲げたのだ、と真相が書かれていました。
 最後に由利は教授に妹の遺品を整理していたときに、引き出しから宛名のない手紙があったと相談します。「宛名のない手紙は未来永劫あてのない旅を続けるか、私達の知らない方法で辿り着く」と教授が言葉を残す。

 

・ジャズクラブ・サーティースリー
 「ちょっと待って。やっぱりおかしいよ。どうしてハセッチはこんなことまで知っているんだ」と由利が言いだします。退職願いを出したのは昨日のことなので、昨日から眠ったままの長谷川は当然知らないはず。三池も小説に書かれていたことは一通り同じで、彼女から届いた手紙に関しては一期一句同じだ、と言い出します。三池の話の証言者としてマスターを探すがマスターはおらず、「マスター?マスター??」と周囲を探す三池。
 すると由利はハッとし、「俺たちはどうしてここにいる?」と三池に問い掛けます。「俺がカウンターで飲んでいるところに由利が来て~」と三池が答えますが、「それは小説の中の話だろう」と由利は何かに気付いたかのように話し始めます。
 長谷川の病室で小説を読み始めたはずなのに、どうして自分達はこんなところにいるのか?と由利が思考を巡らせ、店の名前を三池に尋ねると、ジャズクラブ・サーティスリーだと言います。そして由利は何かを思い出したように「三池、トイレのドアを開けて見ろ」と言い出します。
 命令されつつもトイレのドアを開けると、眩い光と激しい音に苛まれすぐにドアを閉めます。
 なんだか気持ち悪い場所のように思えてきた三池は出入口を探すも見つからず、もう一度トイレのドアを開けてみるように由利に命令され、再び開けます。すると、ドアの先は真っ暗。ドアの先を真っ直ぐに見る三池に、由利はドアとは反対方向を見つめたままドアの先になにが見えるのかを三池に確認していきます。真っ暗だと思われたドアの先は夜空で、星が輝いていること。月は金色より銀色に輝いていること。そして星々がゆらめいて見えているのは、それが水面に映る夜空だからだ、と。「どこかで聞いたことがないか?」「長谷川が見た夢の話と同じだろ」と由利が言いだす。
 一体ここがどこなのか、と戸惑う三池に「まだ仮説に過ぎないが」として由利は「ここが宇宙の外側だ」と答えを導き出し、三池に仮説を説明します。
 自分達が長谷川の小説の中に迷い込んだのか、それとも自分達は元々長谷川が書いた小説の登場人物に過ぎないのか。その証拠に、長谷川の描いた小説の原稿用紙が真っ白になっていた。「長谷川の小説の中に長谷川の小説は存在出来ない。パラドックスが起こるからだ(由利)」
 そして、長谷川の意識が小説を読んでいた自分達の意識と融合して、集合的無意識によって長谷川の意識に繋がってしまったのじゃないか、と説明する由利。
 この空間から脱出するには「あの(トイレの)ドアは、この妙な世界から脱出する出口だ」と強く思うことだとし、三池は由利に命令され、トイレのドアを一気に開ける。そして眩しい光とともに長谷川が登場する。

 

◇曲:ちぎれた翼
 曲終わり、長谷川が小さい箱を2人に手渡して退場する。

 

 箱を開けると、中には星座盤の形をした箱と封筒が入っていた。星座盤の形をした箱はオルゴールで、開けると3人が聞き覚えのあった曲(Change Your Destiny)が流れる。
 そして封筒の中に入っていた手紙には、全てか書かれていた。

 

・長谷川からの手紙
 「手紙代行業をしていると、他人の気持ちが僕の中に通り過ぎるような気がして」いて、この仕事を長く続けてはいけないと思っていた長谷川。
 そんな時、高校時代に手紙を渡せなかった彼女が現れた。彼女の話はこうだった。
 高校時代に一目惚れした先輩を想って作った曲が秋の文化祭で演奏することになり、曲を聞いた先輩が気に入ってくれて楽譜が欲しい、と言われて渡したものの、彼は卒業を待たず親の転勤で転校してしまった。数年後、自分はあと半年の命だと宣告された直後、偶然街であの曲が流れているのが聞こえた。音を頼りに地下のバーへ行くと、トロンボーンであの曲を演奏する彼と再会した。
 そのまま彼と過ごしてたある日、彼が阿修羅像のような似顔絵を描いたお客さんが翌日、交通事故で亡くなったのをニュースで見て、彼は未来を描いているのでは、と思った。そして、彼が描いた自分の似顔絵も阿修羅像のような似顔絵で、自分は死ぬのだと確信した。
 そんな彼へ手紙を書きたい、と手紙代筆業の元へ訪れた彼女のために、長谷川は記憶喪失を提案し、手紙を書いた。
 「そして僕はまた一つ、自分を失った」

 

 楽譜を高校時代に貰っていた三池は勿論のこと、妹の曲だから覚えていた由利。そして彼女のことが好きだった長谷川なら、楽譜を手に入れていても不思議ではないとし、だから3人共あの曲(Change Your Destiny)を知っていたのだ、と話す。
 そして、3人がスタジオで再会したあのメールは長谷川が送ったんじゃないか、と三池?が言いだす。そして、その時には病状が進行して忘れてしまっている自分自身宛てにもメールを送ったのでは?と推察。
 「“宛名のない手紙は、私達の知らない方法で辿り着く。”教授の言ってた通りだ」と由利が彼女が書き残していた手紙を三池に手渡す。

 

・彼女からの手紙
 詳細な内容はド忘れしました(汗)が、三池に出会って幸せだったとし、「私達はあの日、運命を変えることが出来たのです」と、自分達(三池と彼女)が、あの夜、トロンボーンを演奏する三池の音(曲)のお蔭で再会出来たことを喜んでいるような文章でした。
 そして最後に「追伸。真の芸術はむごいものでもあると思います。どうか、そのむごさに恐れないで」と綴られていました。 

 

◇曲:days-tears of the world-


・病院
 長谷川のお見舞いに訪れる三池。
 「なんか、凄く長い夢を見てた」と話す長谷川に「俺もすんげー長い夢見てた」と話しかける三池。そこに由利が現れ、「あれは夢だ」とし、三池と自分(由利)が見ていたものは小説を読んでいる間に起こった集団催眠だ、と三池に話す。すると長谷川が「2人とも、僕の夢に出てきたでしょ?」「あのオルゴール聞いたよね?」と言う。
 「これはどうやって説明する?」という三池に、自分の一生を掛けても研究をするという由利(辞職願を撤回してきた)。そして三池も商売道具を持参し、長谷川に「お前の似顔絵を描かせてほしい」とお願いをし、「良いよ」と答える長谷川。
 絵を描いてもらいながら、「不思議だな。自分のことは分からないのに、2人のことは知っている気がする」と笑う長谷川。途中、由利が絵を見ると「三池、それじゃあお前の絵…」「それ以上言うな。言ったらこの絵は自由じゃなくなる」と制する三池。
 完成した絵を長谷川に見せ「ああ、これが僕だよ」と呟く。

 

◇曲:Change Your Destiny

 

◇曲:Dahlia

 

 

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 「このシーンとこのシーンの間にアレがあった!」と書きながら思い出したところもありますけど、長くなるので削りました。だいたいこのようなストーリーだったかと思います。あとは他の方のレポや雑誌のレポで補完していただければ(疲れた)。

 

 まあ、結局のところ、3人が共通して知っていた曲(Change Your Destiny)は、由利の妹で長谷川の片思い相手で、三池の彼女だった、という話です(極端なまとめ)。

 

 G2さんの作品はこれで3回目(フォレスト、シルスプ)の観劇なりましたが、物語のテンポが相変わらず良かったです。無駄がないんですよね。舞台によっては「このシーンいる?」「場面展開変わり過ぎてついていけない」とかあるのですが(私が舞台観劇初心者だから)、G2さんの作品はそんな初心者から見ても物語を追い易い作品なので、とても面白かったです。
 まあ、簡単に訳すと三池と彼女であって由利の妹であって長谷川が片思いした彼女が作った曲で結び合う3人の物語です。

 

 前回の感想でフォレストロスを再発させたのは長谷川の小説「迷いの病の世迷言」シーンです。長谷川の語りベースで坂本さんと長野さんがそれぞれ教師や同級生、編集者を演じています。小道具程度(眼鏡やジャケット)で後は演技力のみでそれぞれ演じ分けしていましたが、作文を嫌がる小学生駄々っ子の坂本さんが可愛かった。椅子を前後ろ逆にして(正面に背もたれ)座って駄々をこねるアラフィフ。そして今思い出しても長谷川の語りがフォレストでした。ああ、懐かしく愛しきフォレスト(フォレストロス)。
 あと、初日に小道具で爆笑が起こったのはチンピラ・坂本さんが手にしていたセカンドバッグです。セカンドバッグ・マサが見られるとは誰もが思わず、セカンドバッグを少し乱暴に机の上に置いた瞬間、笑いが起こりました。チンピラも似合うのがちょっとオカシイ(褒めてる)。似合う繋がりでマダム・ヒロシの違和感の無さもオカシイ(褒めてる)。駄目出しをするときに「ダメよぉ~」と言うのですが、言い方が日本エレキテル連合さん(笑)。サングラスを少しずらしたりする動作もありつつ、結局は口頭で言っちゃうから、と仕事をキャンセルするマダム。それにしても、旦那さんにどんな嘘を付いていたのか気になる。*6チンピラも果たし状て。一体何があった。

 

 で、伏線について。まさか冒頭で3人が話していたエピソードがそのまま伏線となって後半で回収されていくとは誰も思うまい。特にジャズクラブ・サーティースリーのトイレのドアは圧巻でした。2回目のドアを開く直前に由利が三池に自分達がいる店の名前を確認するんですけど、そのときに「あれ、聞いたことある店だな…」と思い始め、由利が「トイレのドアを開けて見ろ」と三池に命令したときに思い出しました。あ、井ノ原さんが冒頭で話をしていた店員全員ミッキーだった店の名前だ!と。そこからの回収劇は寒気がするほどでした。宛名が描かれていない彼女からの手紙に「運命を変えることが出来た」と書かれているのは坂本さんが「運命って決めつけられているのが嫌」と言っていたことに対しての言葉だっただろうし、三池と由利がいたジャズクラブ・サーティースリーが宇宙の外側だ、と由利が言うのも長野さんが「宇宙の外側がどうなっているのか」と冒頭で言っているし。まだまだ他にあったかと思います。冒頭のフリートークからの後半の劇的回収以外のシーンでも、ちょくちょく伏線の回収があったかと思います。予知能力のこととか。予知能力について由利が説明する台詞とかもっとたくさんあったのに覚えきれなかったのが悔しい。長谷川からの手紙の冒頭あたりも覚えられなかったのが悔しい。というか、ジャズクラブ・サーティースリーは「長谷川が見た夢の話」って由利が言っていたけど、3人はいつから三池と由利と長谷川だったんだろう。最初からだったのかなー?誰か、冒頭のフリートークで3人がそれぞれのことを「坂本くん」「長野くん」「井ノ原」って呼び合っていたのか覚えている人いませんか…?呼び合っていないなら、3人とも最初から「三池」「由利」「長谷川」として登場していたのかな。だとすると登場した後に一礼するのですが、3人がたどたどしくしながら周囲を見渡したあと一礼したことに説明が付くのですが。

 

 三池、由利、長谷川はそれぞれ役者本人を反映された、ということもあってか?三池と由利の関係性が非常に面白かったです。ジャズクラブ・サーティースリーに迷い込んだところは如実で、トイレのドアを開けるのも閉めるのも三池に命令する由利。そして「嫌だよ!」と由利に強く言いだせない三池(笑)。「理論を組み立てるのは自分(=由利)で、実証するのはお前(三池)の役目だ」とまで言われてしまい、長谷川が置いて行ったオルゴールは由利が手にしていたにもかかわらず「俺の役目だからな」と食い気味に言いながらオルゴールの箱を開ける三池。三池と長谷川が2人きりというシーンは何度かあったものの、由利と長谷川2人きりのシーンがなかったのが残念ですね。まあ、研究室のシーンでは井ノ原さんが教授役なので無理なのですが、病室シーンでも先に三池がお見舞いに訪れて、後から由利が来る構図でした。*7どんな会話でこんな関係性に落ち着いたのかG2さんにお聞きしたい所存。対して長谷川はストーリーテラーということもあるのか、三池と由利が長谷川の思考の中で彷徨うストーリーのためか、人格喪失症ということもあるからなのか、純粋な好青年以外の印象はなかったかな?といったところです。V6の井ノ原さん、というよりはあさイチの井ノ原さんのイメージに近いような気がします。似顔絵を描いている三池と絡むシーン以外はあまり2人(三池と由利)とがっつり絡むシーンなかったね。いいの、長谷川可愛いから。

 

 好きだったシーンは全部長谷川絡みなのは私がずっと「長谷川可愛い」「長谷川愛しい」と思っていたから仕方ないです。マダムとチンピラのやり取りも好きだったのですが、「Sing」で坂本さんが軽やかに踊り歌う中、バーカウンターで由利と曲に合わせて頭を左右に揺らしたりしているのが可愛かったです。というか、マスターの衣装が好きでした。
 次に好きだったのは「ちぎれた翼」は3回目のドアを開けたときに長谷川が登場して歌うのですが、その登場の仕方がまずかっこ良かったです。ドアの向こう側は1回目に明けたときのように白くて眩しかったのですが、その眩しい中から登場した長谷川に立ち姿がかっこ良かったです。ロングカーディガン?を着ているのがサマになっていて「長谷川かっこいい」とか思わなかった(語彙力相変わらず無し)。そのまま「ちぎれた翼」を歌うのですが、振り付けが良かったー!三池と由利が長谷川を捕まえようとするけど、中々捕まえることができない、といった感じの振り付けだったのですが、サビで3人が横並びになり、真ん中にいる長谷川の両腕を三池と由利がそれぞれ下から突き上げて上に上げさせる振り(伝われ!)が最高に良かったです。テレガイ*8のレポに写真があったかも?あ、でも真ん中にいるの三池だ…?記憶違いかも知れません。*9
 あとは、「days-tears of the world-」。宛名が書かれていない彼女からの手紙を読んで三池が泣いた直後ということもあって三池の歌声が切ないのですが、もっと切ないのはやはり長谷川。長谷川の「I love you...」がとにかく切ない。叫んでいるようにも泣いているようにも聞こえました。そのあとも歌っていないところでは上手側て立ち止まっているのですが、その背中が実に切ない。背中が泣いていました。これで余計に長谷川が愛しくなったのですよ。いや、元々はフリートーク後のセットチェンジ中に「僕って長谷川なの?」「井ノ原じゃなくて?」と言っているところから愛しく感じたのですが(早い)。そもそも、長谷川の一人称が“僕”なのがずるい。そんなの可愛いキャラ確定に決まってるじゃない、三池と由利をセット扱いといい、G2さんが「ファンが見たい3人」分かっていて怖い。いや、これは3人と雑談をした結果生まれたのか…?ともあれ、G2さんにハムの詰め合わせセット(贈り物といえばハム)贈りたい。もしくはヱビス

 

 とまあ、見た感想を語ろうと思えばまだまだ語れます。これは感想を言い合うにはもってこいの作品だったのではないかなと思ってます。基本、一人でいく私はこうして感想を文面化して発散させているのが何よりの証拠です(笑)。

 

 ここからは長々と思ったことを書きなぐりますので、ご注意くださいー。

 

 そもそも、なんで長谷川は「迷いの病の世迷言」を書き始めたんでしょうね?10年以上に渡って小説を書き続けてきた結果、編集者に「もはや小説とは呼べない」とまで言わせたのに。小学生/中学生の作文では先生に褒められ、最初の作品を「文章は良いね」と言われていたのを聞くかぎり、文章を書く才能(感想とか)はあっても、ストーリーを書く才能は無かったのかな、と思ったりしました。だって、彼女に依頼されて三池宛てに書いた手紙を聞く限り、記憶喪失て。ちょっといきなりの展開すぎて嘘っぽく聞こえてしまうんですよねぇ。三池も嘘だと感じとって、彼女が嘘をついてまで自分と離れたかったのかと思ったショックで絵が描けなくなったんじゃないの?というくらいには展開としては違和感を覚えてしまいましたよ。なんか他にもっと良い書き方があったんじゃない?と想像してます。単純に過ちだと言えばいいじゃない。再会した懐かしさで一緒にいたけど、やっぱりあなた(三池)とはいられない、と思ったとか何とか。それまでは他人の似顔絵だから平気だったけど、いざ自分の似顔絵を描いてもらったらショックだったの、とか。記憶喪失云々を出さなくても離れたことに対する手紙は書けたと思うんですよ。でも、「迷いの病の世迷言」は良く出来ていたので、ストーリーをイチから作るのが苦手でも、エッセイは得意なのかも知れない。ほら、長谷川は井ノ原さんモチーフだから。井ノ原さん、実際のことを拡張してトークするの得意だから(そこ?)。
 「迷いの病の世迷言」を書き始めたタイミングは分かりかねますが(タイトルからして病気を知ってからだと思いますが)、恐らくは三池と由利のため、なにより自分自身のために書いたんじゃないですかね。再会したときは確実に自分(長谷川)は病気が進行して自分が何者なのか、三池と由利のことも分からなくなってしまう。忘れてしまう、という一種の恐怖感から書き始めたんじゃないのかな?それこそ最初は「何で自分は小説家になりたいのに、沢山書いても採用されないんだ」くらいの愚痴程度のもので書き始めたのかも。だから「世迷言」というタイトルを付けたのかな?小説のタイトルって、その物語を決定付けさせる重要なものだったりするので、どうして「迷いの病の世迷言」なんてタイトルにしたのかも気になる。「世迷言」なんて聞き手にとっては意味の分からない不満や愚痴、なんて意味ですよ(調べた)。「迷いの病」は=人格喪失症という「自分と他人の区別がつかなくなってしまう」病気のことだとは思うんですけど。で、徐々に自分のことではなくて三池と由利のことばかりになっていったのは、集合的無意識によって3人が強く繋がり始めて、三池と由利の意識を自由に行けるようになった長谷川が2人が不満に思っていたこと(三池は画家として売れない/彼女とのこと、由利は研究は思うようにいかない/母親のスプーン曲げの真相)を書き始めたのかな?端に、自分自身と三池、由利との区別はつかなくなってきて書いただけなのかも知れない。少なくとも、小説としてのオチは無かったのかも知れない。あ、でも、由利が三池に宛てのない手紙を渡すところまでが長谷川の小説の中の出来事だとすればオチはきちんと成立している。そもそも、どこまでが長谷川の小説の中の出来事だったのか不確かなくらいに不安定な世界だったし。いや、でもそこまで考えてしまうとそれこそ迷ってしまうので、一応、ジャズクラブ・サーティースリーで由利が「ちょっと待って、おかしいよ」といい始めた件は小説の中ではない、と仮定しておかないと収拾がつかないわ、これ。
 (おそらく)エッセイストとしての才能を見出されたこそ手紙代筆業を紹介されたのでしょうけど、いかんせん、長谷川は先生に「将来は小説家にでもなったらどうだ?」と言われたのがきっかけで小説家を目指し、最初の編集者にスコット・フィッツジェラルドの話を聞いて127回目までは頑張ろうと10年以上鳴かず飛ばずで頑張るほどには純粋でひたむきな性格をしていたので、「他人の気持ちが僕の中に通り過ぎるような気」がするくらいの仕事で、「自分と他人の区別が分からなくなる」くらいには、依頼者の想いを充分過ぎるほど感じてしまったのでしょうね。それが少しずつ、集合的無意識によって他人と繋がれるようになり、依頼者の彼女の手紙を書いたことで「自分を失って」しまったんでしょうねぇ。切ない。彼女から話を聞いた段階で、失恋決定ですし(2回目)。
 全てを知った長谷川はどんな気持ちだったのかなー、と思うと当時に、三池が描いた長谷川の顔はどんな顔をしていたのか気になる。「三池、それじゃあお前の絵…」と由利が言いだす程度には今まで描いてきたテイストの絵ではないのは分かるし、なにより、これまで「描かされた」と言っていた似顔絵を自ら進んで「描かせて欲しい」とまで言ったので、インスピレーションが下りてきたんだろうなーとは想像してしていますけど。「ああ、これが僕だよ」の台詞にどんな思いを込めているのかG2さんにお話しを聞きたいし、観劇された方々がどう受け取ったのかお聞きしたい所存。ちなみに私は色のついた絵だったんじゃないかなと思っています。三池の似顔絵って「色付きは3,000円、白黒で1,000円」といって、色付きでお願いしているお客もいるわりには白黒だったんですよね。「ハートで描く」と言っていた三池には全てモノクロに見えていて、それが再び筆を取ったときにはおぞましく見えていたハート(被写体)がとてもカラフルで綺麗な姿として見えていたのかなと。路上で似顔絵を描いていたころの三池の心情(本当に描きたい絵が描けない葛藤や予知能力があるかも知れないこと)も多少は反映されていたからこそおぞましい絵になっていたけど、全てを受け入れて心が晴れたからこそそれまで見えていた世界がとても優しいものになっていたら良いな、と何故か三池応援精神に切り替わりました(笑)。どうしてそうなった(笑)。

*1:坂本さんに至っては、礼をしたときに椅子の背もたれに肘をぶつけて痛がっていたりしていました。あれは常にそうだったのかな?

*2:手紙を読み始めると荻野さんがピアニカで演奏を始めて、ちょっと驚くお三人さん可愛い。

*3:途中、人間は一人ひとり、ひとつの星と繋がっている、といった話もありました。詳細は忘れちゃいましたけども。

*4:毎回、話しを始める人が真ん中のスツールに移動して座ります。

*5:言う順番は逆だったかも知れません。でも、こんな感じで区切って病名を言っていたかと。

*6:マダムは旦那さんに嘘を付いていたことについて手紙で伝えるような内容でした。でも、謝罪するつもりも、元々嘘をついていたつもりもないマダム。

*7:この文章を書いていて、The Coversで披露した「絶対絶命」の「遅れてきた彼」で登場した長野さんを思い出しました。

*8:「TV ガイド 」2/4号

*9:「TV ガイド 」2/4号94P掲載。合計4Pもレポを掲載して下さっているテレガイさんありがとうございます。